私こと金鱗化龍は1983年に「青島市で生まれました」、それからは周りの子供たちと同じように幼少の頃を過ごしていましたが、少しだけ違っていたのは他の子供たちに比べ「生まれつき頭が良かった」こと。自慢ではないですよ、なぜなら周りのレベルが低かったからです、その範囲の中で私だけが「混血」の原因によりマトモだったのです。

この事を語るにはまず第二次世界大戦まで遡ります、当時は清朝の「闖関東（ちんかんとう、簡体字: 闯关东、チュァングヮンドン）」政策により、山東省から満州地方に移住していた一組の夫婦が遼寧省丹東市で食堂を経営していたところ、日本敗戦により植民引き揚げの負担となる弱小者(女、子供)が置き去りにされる中で、正式に託された私の祖母(当時5歳)を養子として迎えることになりました。

これにより私の曾祖父となった男性は４人兄弟で、４人中３人が子無でした。その妻で私の曾祖母となる女性は(戦乱の最中でも教育を受けられる)いいとこのお嬢様で、家中の実権を握っていましたので、「憎き日本人」の子供を受け入れる事ができました。その後は子育てをしながら店を切り盛りして、成人結婚するまで真っ当に育て上げ、教育もしっかり受けさせました。祖母が大工職人と家庭を築いた後、老年期に入った曾祖父母は中国人に共通する「落葉帰根」の思想により故郷青島市に戻って生活をしました。

数年経過し、祖母は３人の子を産み、祖父の稼ぎでは育てきれなくなったので、長女で私の母となる子供を青島市の老夫婦に預けました、こうして幼いながらに母も養子となったのです。そんな母も箱入りで育てられ、世間知らずのままに以前から「地元有数の悪ガキで知られていた」父と恋に落ちてしまいました。父は村の半分を占める大家族劉氏本家の三男坊ですが、文革が横行した後では特に損害が酷く落ちぶれの程度も激しかったです。9人兄弟の中で生き残った6人の一人で、物心がついた頃から乞食をしていたそうです。

ようやく結婚にたどり着いても財産など一つもなかったので、父は布団一組を持って母の所に転がり込んで実質婿養子となったのですが、曾祖父はその家系において分枝末流だったので、父母の間に生まれた子供については無理に姓を変える必要がないと言うことでした。そんなわけで劉家の流れをくむ私が誕生したのですが、これがまた大変でした。生まれつき虚弱体質で、あらゆる手段を尽くして、最後は神頼みで占い師に言われた通りにして何とか普通に生活できるようになったのです。

まず、嘔吐が激しく母乳さえ受け付けられない症状を解決するためには、「百以上の家庭から糸を集め、それらを銅銭に通し首にぶら下げること」を言われ、その通りにするとピタリと良くなりました。しかし乳児にとっては首が曲がるくらいの重さで、不憫にアイテムを思って外すとまた嘔吐が始まるので、百本を超える糸の束が自然に擦り切れるまではいつも修羅場でした。次に、長生きするためには名前の一文字に必ず「金」をつける様に言われ、前記のこともあったので素直に従いました。

最終的に私の名前は上記画像のような判断結果になりました。そしてそれは日本に来るまでずっと使われていた名前です。これにて一件落着、なわけがない！大変なのはこれからなんですよ。なんと一歳になったばかりの私はまたもや養子として曾父母に預けられました、これで3回目ですよ、3・回・目。いい加減老人を労われよと思いませんか？こんなことになった原因は「一人じゃ心細いだろうから、もう一人兄弟を産んであげよう」などと言う建前で、悪しき農村の習慣「労働力となる男は多い方がいい」の発想によって、一身に受けるべき親からの愛情を奪われたのです。

幸い曾祖父母は育児経験が(そりゃー3人目ともなれば)豊富で、孫煩悩な二人によって日本に来る直前(曽祖父は2年先に高齢で他界)まで育てられました。なので私にとっては生みの親より育ての親が大好きでした。祖母に母、そして私を含めてこの中国の老夫婦に育てて貰った期間は50年近く、二人はまさにその半生を私たち親子三代に奉げたのです。この恩は山よりも高く海よりも深いです、しかもその僅かさえも返しきれないうちにご両人は天界に召されました。

あれから20年経った今でも、思い出すだけで胸が張り裂けそうです。今の私にできることはただひたすらに感謝して生きることだけです、じっちゃんばっちゃん、❝もしももう一度あなたに会えるなら、たった一言伝えたい、ありがとう！❞。ありがとう…ByKOKIA